池永陽の「ペダルの向こうへ」という小説を読みました。
![]() | ペダルの向こうへ (光文社文庫) by G-Tools |
↑09年7月発売の文庫です
いうまでもなく、タイトルと表紙の自転車の写真に惹かれて購入(←ホント単純)。
さっそく読んでみたのですが......えーっと、これは「自転車小説」ではありません(笑)! 自転車小説だと思って読むと、たぶん「あれ?」と思うことでしょう。そうではなく、「ホロっと泣けて、心が温かくなる小説」が読みたいな、というときに手にとってください。
物語の主人公は、父と子です。息子は中1の隆。1年前、母が運転する車が事故を起こし、同乗していた彼は右足膝下を切断、義足生活となり、それ以来、不登校となっています。事故当日、仕事と偽って愛人と会っていた夫の洋介は、息子と向き合うために仕事をやめ、妻の遺骨を届けようと、隆を伴って自転車で妻の故郷・宮古島を目指すのです。
小説は8つの短編からなるオムニバス長編。福生の自宅を出発した2人が、日本各地に立ち寄りながらさまざまな経験をし、少しずつ人間として再生していく様子が淡々と描かれていきます。それぞれの舞台は、湘南、樹海、信楽、神戸、瀬戸内、柳川、那覇、そして宮古島。いずれの物語にも深く死者たちがかかわってくるのですが、読後感は驚くほどさわやかです。
各地を訪れる洋介と隆が重い過去を背負っているとするのなら、そこで出会う人々もまた、それぞれに深い事情を抱えています。互いに心に傷をもつ彼らが出会い、語り合うことで、彼らは次第に癒されていくのです。文章はとても読みやすく、400ページほどの文庫をあっという間に読み終わってしまいました。
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